朝。目が開くと新しい日が始まってる。
朝はあまり得意でなくて、できればあと1時間でも2時間でもベッドでごろごろしていたいと大体思っている。
心に従いそうしてしまった日はたいてい午前ごとまるごとどっかに行ってしまって、「あーあ」となる。
だから、一旦頑張って体を起こして、ベッドからするりと抜けてみる。
お茶を淹れて、ベランダにある陽ざらしになったソファに座る。私の家のベランダはちょうど東向きで、だんだん高い位置に進んでいくにつれ太陽の光は力を増していく。
真正面には大きな木が一本立っていて、毎朝何十もの鳥たちが集まって何やら元気に話している。
「お腹空いたね!どこに食べ物探しに行く?」
「おはよー、よく寝れた?」
議題に事欠かない鳥たちの朝ミーティング。鳥たちは完全に朝からオンである。
その半面、まだオフの自分。覚めきらない眠気、まだ半分夢の中に浸かっている脳みそは少し時間をかけないと起動しない。
あくびをしたり、伸びをしたり、髪の毛をいじったり、お茶をすすったり‥他人から見たらきっと猿のように見えると思う。
「さて、どんな朝にするか」ぼんやり考えていると、結局大体、徒歩1分の角にあるカフェに行くことになる。
”行くか。”
ここまで来ると、後は早い。何かスイッチが押されたかのように、猿から人間になる。
顔を洗い、髪を外に出てもおかしくないくらいに簡単に整え、ベランダで感じた温度にあった服に着替える。
”鍵・財布・携帯” いつも出かける時に心でとなえる忘れ物チェックをして本やらスケッチブックやらペンを持ったら‥
”行くか。”の5分後にはカフェに着席して、いつものようにカプチーノをオーダし終わっている。5分で進化を遂げるんだからダーウィンもびっくり。
私はこの角のカフェに1年半は通っている。週にだいたい3回、多い時はほぼ毎日。
「The Little Larder(小さな食品庫)」という名前のこのカフェは、洒落てないんだけど、そこがまた落ち着くんだ。誰も着飾らない、街角の、近所の人が集まる場所。
シンプルにコーヒーがおいしくて、ご近所さんの「日常」の一部を垣間見れるのがおもしろい。新聞を読む人、クロスワードを解いてるおじちゃん、数人で朝会を楽しんでいる友達グループ、さんぽの休憩、読書してる人。
私はそんな近所の人達に囲まれながら、その時の気分で、本を読んだり、何か書いてみたり、自分会議を開いてみたり、ただただボーっと考え事をしたりする。
そうしているうちに、だいたいアクセルがかかる。
空いていれば大体座る席が決まっていて、そこから見る景色は変わらないようで、季節を追ってだんだんかわっていく。
短い冬が終わったブリスベン。今日は店から見える立派なプルメリアの木が、冬の間丸裸だったのに、芽吹いてきているのに気づいた。
また、季節がかわってゆく。
時間は、知らずも前に前に進んでゆく。
毎日、起きて、何か一日忙しくしたり、頑張ったり、笑ったり、ゆったりして寝る。そんな毎日の積み重ね。何か少しずつ、進んでる。ちょっとずつ変わっている。
私も、近所の人たちも、みんな、みんな、一日一日を積んでいる。
そんな日々を思うとなんだか愛おしいのだ。
今日もきっと一日忙しくしたり、頑張ったり、笑ったり、ゆったりしていたら夜が訪れる。
そして目を閉じて、開くと、また鳥たちの朝の談話と共に新しい日が待っている。
”良い日だったな”
そう思える日を積みながら、季節とともに、少しずつ前に進んでいきたいと思う。
今日は、いつも頼むカプチーノを飲みながらそんなことを考えた。
だいたいいつも、欲張って色んなモノを持って来すぎである。
Comments